高校受験や大学受験のために、好きでもない英語の勉強をせざるを得ない方もたくさんいると思います。「英語なんて、翻訳アプリがあればいいじゃないか。」とか、「海外に行く予定はないのに、なんで勉強しなくちゃいけないの?」そんな声が聞こえてきます。
英語を話す外国人は、英語を勉強しなくても最初からできるからずるい!なんて思っている方もいるかもしれません。
それでは、英語を使って生活している英語圏の中学生や高校生は、外国語を勉強しなくていいのでしょうか。
そんなことはないのです。少なくとも、オーストラリアにおいては、中学生レベルでは、外国語が必修のことが多いです。また、大学入試の科目として、外国語を選択する生徒も多くいます。
ビクトリア州の高校での外国語履修状況
Year7 中学1年生 | 必修 |
Year8 中学2年生 | 必修 |
Year9 中学3年生 | 一部必修 |
Year10 高校1年生 | 一部必修 |
Year11 高校2年生 | 選択 |
Year12 高校3年生 | 選択 |
オーストラリアでは、外国語の科目として、フランス語、イタリア語、中国語、インドネシア語、そして日本語などの選択肢があります。そして、日本語を高校レベルで選択した生徒は、「受験英語」ならぬ「受験日本語」の準備をすることになります。
では、「受験日本語」とは、どういったものなのでしょうか。ここでは、私が教鞭をとっていたビクトリア州の実態をお伝えします。まず、以下の日本語の大学入試で問われる項目をご覧ください。(総合点は、学校でのテストの成績も含まれます。)
スピーキングテスト
生徒自身に関する会話 およそ7分
例 趣味、家族、スポーツ、学校生活、旅行経験、将来なりたい職業、選択した教科、見たテレビや映画など
ディスカッション およそ8分
例 日本の食べ物、日本の乗り物、環境問題、テクノロジー
筆記試験
計2時間15分
リスニング、リーディングいずれもメモを取ることができます。
リスニング1
英語での記述式
リスニング2
日本語での記述式
リーディング&リスニング
5分の日本語のリーディングを行った後、リスニング。英語での記述式
リーディング&ライティング
日本語のリーディング後、その文章に対して回答する形の日本語の文章を書く。(原稿用紙300字程度)
ライティング
選択した文章に関して、日本語の文章を書く。(原稿用紙400字から500字)
日本語の大学入試のサンプルを以下にリンクします。下から3ページ目からの「Transcript」には、日本語リスニングテストの台本が記載されています。
「受験日本語」には、筆記試験のほかに、スピーキングというものが存在し、それが筆記試験以上に受験生にとってハードルとなっていることは確かです。
高校教師は、授業の準備があり、会話の練習相手に時間を多くさけないため、学校により、ボランティアの日本人を採用して会話の練習にあてることがあります。また、会話練習のために、家庭教師を雇うことは多くみられます。
スピーキングに関して言えば、学校に日本人のボランティアがいるかどうか、家庭教師を雇える経済力のある家庭かどうかなど、ある程度の「運」が作用することは否めません。ただ、高校レベルにおいては、外国語が必修ではないことからか、外国語の大学入試のシステムに関しての不満の声は、あまり聞かれません。
スピーキングテストと言えば、最近、日本においても高校受験レベルでも東京都がスピーキングテストを導入することで、議論が起きています。やはり、対象となる生徒が多いことから、影響を受ける生徒数は海外の事情とは桁が違いますね。
採点をノンネイティブスピーカーであるフィリピン人が行うことで、果たして公平な採点が可能なのかであるとか、学習の機会の格差に課題があることは確かだと思います。私個人的には、日本において、コミュニケーション重視の語学教育にシフトしていこうとする流れは、良い傾向だと思っていますが、方法の改善が望まれます。
私は、外国語教育は、外国人とのコミュニケーション能力をあげる努力することに意味があり、それがお互いの文化をリスペクトしあうことにつながるのではないかと思います。翻訳機を使用しても、なかなか心はつながらないかも知れません。自分の力で学んで自分の言葉で話してこそ、初めて相互理解につながるのではないかと思います。
現に、大変な大学入試の「受験日本語」を乗り越えてきた生徒たちは、日本語学習を通して、日本に対する様々な知識を得ることができ、「日本ファン」となっていることが多いのです。
「受験英語」に行き詰まったら、大変なのは、皆さんだけではなく、世界中の同じ世代の皆が外国語習得に向けて努力をしているという実態を知っていただければと思います。語学力があれば、視野が非常に広がります。つらいこともありますが、吸収力のある今のうちにコミュニケーション力を上げていきましょう。
英語でのコミュニケーション力の向上には、まず音読で土台を作ることがおすすめです。ぜひ、当ブログの以下のページをご確認ください。