前回の英文法の記事では、仮定法過去完了について説明しました。今回は、仮定法過去についての説明です。
仮定法過去とは、簡単に言えば、「かなわない願望」の表現であることが多いです。仮定法過去完了が、主に過去の「後悔」であったことに対して、仮定法過去は、今ある「願望」なんですね。
だったらいいな。できたらいいな。そんな意味になります。
ここで、仮定法過去の公式を確認しましょう。
「If+主語+動詞の過去形, 主語+would(should ,couldなど)+動詞の原形」
意味「もし~なら、…のに(だろうに)」
例文としてあげると、以下のような文になります。
If I had tickets, I would take you to the concert.
(もし、チケットがあれば、あなたをコンサートに連れていけるのに。)
Ifの後が、過去形になっていることで、かなわない願望を表現しています。
この場合、チケットが手に入らなかったか、あるいはお金がなくて買えなかったという状況だと推測されます。それでは、以下の文は、どうでしょうか。
If I have tickets, I will take you to the concert.
(もし、チケットがあれば、あなたをコンサートに連れていきます。)
こちらは、同じIfの文でも、その後の動詞は現在形ですね。こちらは、通常の現在の条件節となり、チケットをまだ買おうと思えば買えるという状態です。
このような通常のIfの文とは違い、Ifの後の動詞が過去形になっていた場合、あれ?と思いますよね。基本的に、If の後が、過去形だった場合、かなわない願望の文であると考えましょう。
ただし、願望以外にも、他の用法もあります。例えば、以下の文は推量の表現になります。
If I were you, I wouldn’t say such a thing.
(私があなたなら、そのようなことは言わないだろう。)
※wouldn’t は、would notの短縮形です。会話では、短縮されることが多いです。
何か仮定法過去のいい例文はないかなと思っていたところ、エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカル映画「ロケットマン」で「Your Song」を歌うシーンを見て、願望の表現の歌詞を見つけました。
この曲は、誰もが聞いたことがあると思うのですが、詩の意味を考えたことがない方がほとんどかと思います。まずは以下のリンクから、この曲をYouTubeでお聞きください。
“Your Song” by Bernie Taupin, Elton John
お聞きいただいて、どこに仮定法過去が使われているかわかりましたか?
まず、この部分です。
I don’t have much money, but, boy, if I did
I’d buy a big house where we both could live
意味は、「今はお金がないけれど、もしお金があったら、二人で住める大きな家を買うのになあ。」です。
If からが、仮定法過去となります。ここで、didとあるのは、did have と同じ意味ですので、hadと置き換えましょう。また、I’dとあるのは、I would の略です。つまり、わかりやすくすると、以下のような文になります。
If I had much money, I would buy a big house where we both could live.
(もしお金があったら、二人で住める大きな家を買うのになあ。)
もう一つありました。こちらです。
If I was a sculptor, heh, but then again, no.
Or a man who makes potions in a traveling show.
単語sculptor 彫刻家 potions 薬草(魔法の薬)
「もし僕が彫刻家だったら…、違うな。旅回りのショーで魔法の薬を作る人だったら…」
という意味です。
こちらは、仮定法過去の文章が、条件節だけで切れている形です。また、If I was a sculptor とありますが、仮定法過去では通常、If I were a sculptorと、「were」とする方が、文法上正しくなります。もちろん、歌詞にあるようなwasも会話では使われることがあります。
仮定法過去では、If節のbe動詞は、基本的にどの主語でもwereとなります。つまり、一見不自然に見えますが、主語がHeやSheでもwereとなるのです。
例; If he were rich, he would buy the luxury car.
(もし彼が金持ちだったら、その高級車を買うだろうに。)
これらの歌詞を元に、仮定法過去の文を2つ作ってみました。参考にしてください。
If I were a sculptor, I would make a sculpture of you.
(もし私が彫刻家だったら、君の彫刻を作るのになあ。)
If I were a man who makes potions in a traveling show, I could take you anywhere you want to go.
(もし私が旅回りのショーで魔法の薬を作る人だったら、君が行きたい所に連れて行けるのになあ。)
洋楽を聞いたり、歌ったりすることは、英語学習のやる気を上げることができ、おすすめです。歌うことは、このブログでも推奨している「音読」と同じ効果があります。同時に歌詞の意味をじっくり考えてみるのはどうでしょうか。意外な発見があるのは楽しいですよ。
エルトン・ジョンの半生を描いた映画「ロケットマン」は、完成度の高い内容でした。全世界の人々に数々の名曲を残しているエルトン・ジョンの苦悩を音楽で描いています。ミュージカルの苦手な人も飽きずに見られると思います。残念なのは、英語の字幕がないこと。音読は難しいかもしれませんが、日本語字幕を隠しての視聴も試していただければと思います。
洋楽だけでなく、紙の本の音読でも英語力を上げていきましょう。是非、以下のYouTube動画をご覧ください。